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孔食とすき間腐食の違いを見分ける

ピット腐食対すき間腐食

孔食とすき間腐食の違いを見分ける

腐食、つまり周囲環境との化学反応によって材料が劣化する現象が生じると、多大な損失につながりかねません。チューブ・システムの腐食を放置していたことに端を発する不具合は、海洋や沿岸のアプリケーションにおける損失の主原因であり、年間で数十億ドルものコストが投じられています。きちんとチェックし、手遅れになる前に対策を講じておけば、腐食を防止することが可能です。

特定の条件下では、世界で使用されているほぼすべての金属は腐食します。オイル/ガスのアプリケーション、特に海洋の場合は、腐食を防ぐ手段があります。ただし、さまざまな腐食タイプに関する基本知識と腐食の原因を理解しておくことが必要です。腐食をチェックすべき場所を知っていれば、石油掘削装置や精製所におけるリスクを最小限に抑え、時間やコストを大幅に削減することができます。

それでは、海洋や沿岸の環境に適した材料は、どうやって見つければよいのでしょうか。材料セレクション・ガイドのページでは、腐食の対応策を紹介しています。

材料セレクション・ガイドを見る

発生のメカニズム

金属原子が流体によって酸化すると腐食し、金属表面が損耗していきます。全面腐食によって材料が失われた結果、炭素鋼や低合金鋼製のコンポーネントの肉厚も薄くなり、機械的な故障が生じやすくなります。

金属チューブ・システムは、 分析/プロセス計装、油圧ライン、制御アプリケーション、ユーティリティー・アプリケーションなどでよく使用されています。オイル/ガスのアプリケーションで使用される金属の大半は、10%以上のクロムを含むステンレス鋼です。クロムは、金属を腐食から保護する酸化層の形成を促します。それでも、環境条件によって酸化層が破壊すると、ステンレス鋼の腐食は発生します。

特定の条件下では、ほぼすべての金属に腐食が生じます。例えば、鉄が腐食すると酸化鉄=「さび」という副生成物が生じます。ただし、腐食のタイプはさびだけではありません。各タイプの腐食による危険性を評価し、アプリケーションに最適な材料を選定することが必要です。

一般的なタイプの腐食を識別する

オイル/ガス施設に損害を与える腐食にはさまざまなタイプが存在します。大抵の場合、腐食のタイプは金属の化学成分やオペレーション環境に結び付いています。今回は、ステンレス鋼の局部腐食、つまり孔食とすき間腐食について詳しく見ていくことにしましょう。


孔食

孔食は、ステンレス鋼の表面を保護している酸化膜が破壊され、腐食性の水溶液の存在下で、表面下の露出金属部が電子を失いやすい状態になることで生じます。この電子化学反応によって、小さな空洞または「くぼみ」が形成されていきます。

通常は目視検査をしっかり行うことで発見できるものの、時にはくぼみが深くなってチューブに穴が開いてしまうことがあります。また、コンポーネントに引張応力がかかっていると、孔食から割れにつながるおそれもあります。沈殿した海水が蒸発するなどして塩化物濃度が高くなった環境では、特に温度が高いと、孔食が生じやすくなります。

金属チューブに孔食が生じていないか調べる際は、赤茶けた酸化鉄の付着物や、くぼみになりそうな個所が金属表面にないかチェックしてください。

すき間腐食

孔食と同様に、すき間腐食もステンレス鋼の表面を保護している酸化膜が破壊されることで生じ、浅いくぼみが形成されていきます。しかしながら、すき間腐食は目に付く場所ではなく、その名称が示す通り、すき間で発生します。

一般的な流体システムでは、チューブとチューブ・サポートの間、チューブとクランプの間、隣接するチューブ配管の間、表面にたまったほこりや付着物の下などに、すき間が存在します。すき間なくチューブを取り付けることは現実的には不可能です。なお、すき間を狭めすぎると、ステンレス鋼にダメージを与える最大の要因のひとつとなります。海水がすき間に入り込むと、すき間腐食が発生します。やがてこのすき間が腐食性の高い環境となり、腐食の原因となるイオンがすき間から出て拡散することができなくなります。このようにして、すき間内の表面全体で急速に腐食が進行していきます。

すき間腐食は、チューブからチューブ・クランプを取り外してみないと目視で確認することができません。すき間腐食は、孔食に比べてかなり低い温度で発生する可能性があるため、注意が必要です。構造上のすき間(例:チューブ・クランプ)の下では、「くぼみ」が形成されやすいためです。

腐食を防止する方法

大抵の場合、材料に関する基本知識を スタッフに習得させる ことで、腐食を最小限に抑えることができます:

材料の選定:まず、チューブ・アプリケーションに適した 材料を選定 します。チューブはもちろん、チューブ・サポートやチューブ・クランプも対象となります。316ステンレス鋼は、さまざまなアプリケーションに適していますが、クリーンかつあまり高温にならないケースに限られます。温暖な気候、特に塩分が付着しやすい場所や設備では、炭素鋼製の梁や床に生じたさびがステンレス鋼の表面に蓄積すると、316ステンレス鋼チューブの腐食が生じやすくなります。

このような状況では、耐食性に優れたスーパーオーステナイト系ステンレス鋼(例:6Mo、6HN)または2相ステンレス鋼(例:2507)のチューブが適しています。スーパー2相ステンレス鋼は、耐力や引張強さに優れているため、高い許容使用圧力(MAWP)が求められるシステムに適しています。多大な損失につながるような不具合を防止するべく、アプリケーションに適した材料を選定する際は、ぜひスウェージロック指定販売会社にご相談ください。 製品および材料を適切に選定するお手伝い をさせていただきます。

配置および設計:すき間腐食が発生する可能性がある個所の数を減らして腐食を防止するには、システムの運用にも注意を払う必要があります。チューブ・システムのすき間腐食を減らすには、チューブを直接壁に接続したり、チューブ同士を接続したりするような配置は避けましょう。316ステンレス鋼チューブにすき間腐食が見つかったら、コストパフォーマンスの良い316ステンレス鋼製チューブ継手に接続可能な耐食性の高いチューブに置き換えるというのもひとつの手です。スウェージロックでは、316ステンレス鋼製チューブ継手と、耐食性に優れた合金チューブとの組み合わせを提案しています。

腐食および材料科学に関するトレーニング

上記の手法のほか、詳細なトレーニングおよび正確な腐食モニタリング・プログラムを定期的に実行することも有効な腐食防止策となります。スウェージロックは、エンジニアや技術者はもちろん、材料選定プロセスに携わるすべての方向けに、 材料科学トレーニング を実施しています。このトレーニングでは、流体システムに適した耐食性のある合金を選定する方法を学ぶことができます。材料の不具合やコストのかかる補修を防止するには、腐食に関する基本知識(外観、発生しやすい場所、発生原因など)が必修といえます。材料科学トレーニングの詳細につきましては、スウェージロック指定販売会社までお問い合わせください。

材料科学トレーニングの詳細を見る


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